個人再生のツボ

個人再生手続きの要注意点を以下に紹介します。

個人再生か自己破産か

個人再生自己破産、どちらの手続をとるべきか?

このテーマは多くの場面で遭遇します。

簡単にいうと、自己破産はすべての債務の支払いを免除してもらう手続で、個人再生は債務の一部を弁済し、残りの債務の支払いについては免除してもらう手続です。


一見すると、自己破産のほうがいいように思えます。


しかし、自己破産は申立をした時点で持っている財産のうち生活する上で必要最低限以外のすべてを換価(現金に換えること)し、債権者に配当しなければなりません(但し、その価値次第では換価しなくてもよい場合があります)。


一方、個人再生はすべてではありませんがほとんどの財産を手元に残しておくことができます。

 

中でも一番大きな特徴は自宅を残しておくことができる点です。


自己破産の場合、住宅ローンの残っていない自宅であれば当然売却して現金化しなくてはなりません。

また、住宅ローンが残っている場合でも、それがオーバーローンになっているか否かに関わらず、任意に売却して住宅ローンの残債務に充てるか、そのまま住み続けてもほどなく住宅ローン債権者によって競売に掛けられてしまいます。

いずれにせよ手放さなくてはならないわけです。


しかし、個人再生の場合、一定の条件(「住宅資金特別条項」といいます)を満たしていれば自宅を残しておくことができます。


自宅や財産の有無だけでなく、ほかにも職業制限・資格制限がある場合、免責不許可事由がある場合も、自己破産ではなく個人再生の選択を検討する必要があります。

 

せっかくの再スタートのチャンスなのですから、様々な情報から判断してご自分にとって一番良い手続を取ることが大切です。

そのためには我々のような法律専門家を上手にご利用ください。

 



 

 

オーバーローンではない住宅

個人再生は「自宅を処分することなく住宅ローンを継続して返済しながら、住宅ローン以外の借金を圧縮したうえで返済する」ことが可能な手続です。

 

この住宅ローンのみ別扱いできることを称して「住宅ローン特則」といいます。

住宅ローンの残額を圧縮することはできませんが、他の借金は最大2割まで圧縮することが可能です。

 

一般に、この住宅ローンはオーバーローン状態であることが多いですが、オーバーローンではない場合はどうなるのでしょうか?

 

その前に、まずは「オーバーローン」の説明が必要ですね。

 

住宅ローンの残りが2000万円残っていたとします。

この住宅を売却した場合、2000万円を下回る金額でしか売れないとき、この住宅は「オーバーローン状態」であると言います。

 

反対に、売却すれば2300万円の価値がある場合、オーバーローン状態ではなく300万円の利益がでることになります。


こんなとき個人再生手続はできるのでしょうか?

 

答えは「可能」です。

 

住宅ローンの残りは2000万円。

売却すれば2300万円の価値がある。

 

しかし借金は住宅ローンのほかに500万円もあって、到底返せるような家計収支状況ではない。

 

自宅を売って300万円の利益を返済に充てればいいじゃないか、と言われるかもしれないが、長年慣れ親しんだ自宅だけはどうしても守りたい。

 

 こんな場合、どうすればいいのでしょうか?

 

任意整理だと自宅にはそのまま住み続けることができますが、住宅ローン以外の500万円の借金を3年から5年で返済することになります。

 

月々の返済額は5年であれば8万円ですが3年だと14万円ほどになってしまいます。

この返済が可能な家計収支状況であれば任意整理を進めていけばよいでしょう。

 

しかしそんな余裕はない。

 

 

 一方、自己破産なら当然自宅は手放さなくてはならず、しかも最低限の生活に必要な財産は残せますが、それ以外の財産はすべて処分しなければなりません。

 

さらに、自宅の売却があるため、管財手続という方法を取らなければならず、一定期間、破産管財人に財産管理を委ねなくてはなりません。
 

では個人再生ならどうなるのか?

 

自宅がオーバーローン状態になっていて、保険や自動車などの財産が他になければ500万円の2割である100万円が返済額になります。

 

しかしオーバーローン状態ではない場合、返済額は自宅の時価2300万円から5%を控除した2185万円と住宅ローンの残額2000万円を差し引きした185万円になります。

 

但し、ほかに財産があれば、返済額はその額(+α)が上乗せになります(これを個人再生手続上「清算価値保障の原則」といいます)。


あとはこの185万円+αを3年から5年の分割で返済できるかどうかの検討となります。

つまり、500万円あった借金が、自宅を残したままで、185万円に圧縮されたことになります。

 

上記の例はざっくりとした例です。実際の当事務所でのご相談では、

 小規模個人再生が可能なのか?

 

給与所得者等個人再生を利用しなくてはならない場合はどうなるのか?

 

住宅ローン特則が使えるのか?

 

などとといった条件をひとつひとつ丁寧に検討していくことになります。

 

 

保険は解約しないといけない?(個人再生編)

結論から言いますと、個人再生の場合、保険を解約する必要はありません。



個人再生は債務を圧縮した上で弁済していく手続です。

一般的には債務額の5分の1を弁済することになりますが、いくつかの基準があり、その基準に照らして算出された金額のうちの一番高い金額が弁済額になります。


弁済額の基準には「最低弁済額」「清算価値」「可処分所得額」があり、保険の解約返戻金が問題となるのは「清算価値」が基準となる場合です。



清算価値」とは債務者が手続開始決定時に所持している財産の総額です。

現金、保険の解約返戻金、自動車の査定額、退職金見込額などの合計が「最低弁済額」及び「可処分所得額」を上回るとき、「清算価値」の金額を3年ないし5年で弁済していくことになります。



ですから、個人再生手続においては解約返戻金がいくらであるのかが問題となるだけで、保険を解約する必要はありません。



ところで、個人再生は自己破産と異なり、弁済を一定期間続けていく手続ですので、その履行が確実にできなくてはなりません。


そのためには、月額保険料の高い保険や継続して契約する必要性のない保険であれば、弁済原資の確保のため、要するに今後弁済を続けていく上で家計に余裕をもたせるために解約することも考えなくてはならないでしょう。



なお、個人再生手続の申立直近に解約した保険解約返戻金は現金としての扱いとはならず、あくまでも保険として扱われます。


大阪地裁の場合、現金については99万円を控除する運用がなされているため、申立直前に解約しておけば現金扱いになると思われますが、そうではありませんのでご注意下さい。


但し、有用の資として申立費用に充当したり、滞納している税金の支払に充てることも可能ですので、その点についてはよく打ち合わせをしたうえで処理しなくてはなりません。


他には、住宅購入時に掛けていた火災保険の解約返戻金が高額になる場合(解約返戻金に質権が設定されているかどうかも併せて確認が必要です)や契約更新して間もない年払いの自動車保険の解約返戻金にも注意が必要です。



個人再生手続を考える場合は、財産がいくらあるのかが重要な検討材料となります。家計収支状況と併せて財産についてもあらかじめ調べたうえでご相談に行かれることをおすすめします。

小規模個人再生か給与所得者等再生か

個人再生手続には小規模個人再生給与所得者等再生の2種類の手続があります。

 

簡単にご説明しますと、小規模個人再生は債務額の5分の1か清算価値(財産目録に計上される財産の総額)のいずれか高い方の金額を基準にして返済する手続で、一方の給与所得者等再生は債務額の5分の1、清算価値に加え可処分所得額2年分のいずれか高い方の金額を基準にして返済する手続です。

 

では、一体どちらの手続を選べばいいのでしょうか。



大前提として、自営業者の方小規模個人再生しか利用できませんが、給与所得者(いわゆるサラリーマン)はいずれの手続も利用することが出来ます。



それを前提としてみた場合に興味深い統計があります。裁判所の統計によると平成22年に大阪地裁に申し立てられた個人再生事件1411件のうち小規模個人再生は1292件だったそうです。

およそ9割が小規模個人再生を利用したことになるわけです。(補足:現在でも概ねこの傾向は続いています)



この理由としては給与所得者等再生における弁済総額の基準となる可処分所得額2年分が思わぬ高額になる傾向にあることが考えられます。

 

小規模個人再生なら100万円の弁済で済むのに、給与所得者等再生なら200万円を超えることも少なくありません。



しかし、弁済総額を抑えることができるからといって小規模個人再生を選んでも、小規模個人再生では、再生計画案に同意しない旨の回答をした債権者が債権者総数の半数以上いる場合、または同意しない旨の回答をした債権者の債権額が債権総額の2分の1を超えた場合は手続が廃止されてしまいます。



個人再生手続を考えておられる方のご相談を聞いていると、最近の傾向として過半数債権を持っている債権者が存在する場合が多いように感じます。

 

いわゆる「おまとめローン」がその原因として挙げられます。おまとめローンが可能なのは銀行系のローン会社であることが多く、当然貸し出しの際に与信調査を綿密にしていますので、独自に可処分所得額の計算をすることが可能なわけです。

 

そういうこともあって小規模個人再生で申立をした場合、再生計画案に同意しない傾向が高くなっているように感じます。



先日、書類作成をお受けした方の件では、銀行系ローン会社から「小規模個人再生を考えておられるかもしれませんが、こちらで計算したところ、給与所得者等再生でも充分弁済できると判断しています。

 

事情があればご相談に乗りますが、ご相談もなく小規模個人再生で申立をされた場合は同意しかねますので、当初から給与所得者等再生での申立を検討して下さい」との連絡を受けました。



小規模個人再生での手続が廃止されてしまうと、給与所得者等再生で改めて申立をするか、任意整理自己破産の検討をしなくてはなりません。

 

このため、債権者数が少ない場合や過半数以上の債権を持つ債権者がいる場合は慎重に手続を選ぶ必要があります。



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